平成9年度 研究報告 大分県産業科学抜補センタ】
自然塗料による木材塗装の研究
大野善隆
日田産業工芸試験所
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Hi t aI ndus t r i ai Ar t Res ear chI )i \’ i s i on
要旨
人や自然に優しい「自然塗料」の塗装特性を把握するために,市販塗料に関する技術調査を実施するとともに,椅子
やテーブル,収納家具などの塗装表面を対象とした,実用上の塗摸の耐久性試験(耐水性 耐湿熱性,耐汚染性)を実施
した.その結果,耐水性については,NCラッカーや油性塗料と同等またはそれ以下であることがわかった,耐湿熱性
については,ポリウレタン樹脂塗料と同等であることがわかった.耐汚染性については,アルカリ性液やインク(水性染
料液)に汚染されるとともに,汎用塗料と同様に有機溶剤やヨウ素にも汚染されることがわかった。
1. はじめに
全世界的に環境保全の重要性が叫ばれている今日,欧
州・北米・豪州などの環境保護の先進国で普及している
人や自然に優しい「自然塗料」が,合成樹脂塗料の代替
塗料の一つとして注目されている。またぎ 当県において
も家具9 工芸,木履,住宅産業等への利用が期待されは
じめてきた。しかし,この自然塗料の塗装特性がわかり
にくく,特に塗膜の耐久性について汎用塗料(合成樹脂
塗料)との違いが不明なため,関係業界の利用が進まな
い状況にある.
本研究では,自然塗料の実態を把握するため平成9年
10月現在に輸入販売及び国内生産販売されていた,自
然塗料に関する技術情報を調査した,さらに,椅子や
テーブルタ 収納家具などの塗装表面上にお湯を落とした り,その上に熱いコップを置いたり,インク,洗浄剤,
醤油,酢などを落としたときなどの日常生活を想定した
実用上の塗膜の耐久性を把握するために,耐久性試験(耐 水性,耐湿熱性,耐汚染性)を実施したので報告する}
芝.塗料調査 2.1調査方法
自然塗料販売メーカー4社(輸入販売3社,管内生産販
売1社)に対し,市販塗料に関する技循情報についてアン ケート調査した.
2.2 調査結果
自然塗料はアマニ油などの天然油脂や樹脂等を主原料 とした,空気中の酸素による酸化乾燥型の天然樹脂系塗
料で, 合成樹脂,有機溶剤9 有機顔料などの化学物質を ほとんど含まない低公害の安全性の高い塗料である.
木製品内装名外装全般を対象とし,用途や工程に合わ せた塗料が用意され,塗装方法は,刷毛やスプレーなど で塗布した後に,余分な塗料をウェスで拭き取る方法が 基本となっている。
この塗料の特徴としては,木に浸透し木材の調湿機能 を損わないこと,塗膜を作らないため塗面のワレ ハガ
TabFe.1 自然塗料の概要 内 容
木製品内装。外装全般
壁材,フローリング,天井,家具,外 壁,サイディング,窓フェンス,遊具,
その他
内装用,外装用
透明仕上げ用,半透明仕上げ用 下塗り用,上塗り用
塗装方法 塗料を塗布した後に、余分な塗料をウェ
スで拭き取る方法
■
主成分
天然油脂。樹脂/亜麻仁油,ひまわり テ軋 あざみ油さ 大豆隠 カルナパワックi ス,カンデリラワックス,蜜ろうワック ス,コパール樹脂、ダンマル樹脂等
溶剤 脂肪性低臭ホワイトスピリット,芳香テ
レビン油,パラフィン炭化水素イソアリ … ファーテ等
酸化鉄顔料等 添加剤
無鉛乾燥剤(オクテン酸ジルコニュウム コバルト,コバルトオクトート)等
乾燥 酸化専乞燥(硬化時間12∼24時間)
平成9年度 研究報告 大分県産業科学妓締センタ槻 Tab毒e.2 皆兵託宣料と塗装三程
i 試料 塗料の種矩 塗装工程
略記号 下塗り 中塗り 上塗り
Ac Å社 自然塗料(油性∴クリア脚) プライマー 旨 クリアー クリアー Åcc ′ ′ 自然塗料(油性こ着色) プライマー 医 者色クリアー 妻 クリアー 加 ′ ′ 自然塗料(ワックス:クリアー) 含浸ワックス 巨 含浸ワックス
Bc B社 自然塗料(油性:クリアー) デブノ メルドス メルドス
Cc 妻C社 自然塗料(油性:クリアー) トマ購リアー … トマルク照一 Dc 宣D社 自然塗料(油性:クリアー) エキストラクリアー E ファスげオイル 蔓 ファスげオ川 ファスけオイル
喜 Ec ぎE社 油性塗料(チークオイノし′ :クリアー) チークオイル 巨 チー∵クオイ/ル … チータオイル Fc 乙F社 NCラッカー塗料(クリアー)
サンディげンーラー 巨 −− クリアー
Gc G社 湿気硬化型ポリウレタン樹脂塗料(摺り用:クリア}) クー」アー クリアー クリアー
Hc H社 ア舶ット、ポリオールポリウレタン樹脂塗料(3郡艶クリアー) サンディげシ十 巨 クリアー
塗装条件
Tab… e▲ 3
条 件 ≧Fc,翫 諾ザ ド塗り’ 上塗り‥ スプレー塗布 書
項 冒 塗料略記号
刷 看〒亘珂 下塗り.中塗り 下塗り.中塗り,上塗り:
塗布方法
を試験片の表面に塗布し,5分後 ウェスで余分な塗料をふき上げ
上塗り:ウェスでふ
下塗り.上塗り:2D∼23℃で自然乾
燥24時間
以後室内放置30日 下塗り.中塗り、上塗り:20∼23℃で
自然乾燥2胡寺問
以後室内放置30日 下塗り,中塗り,上塗り:20∼23℃で
自然乾燥24時間 以後室内放置30E 塗膜乾燥
1uabFe.2に。塗装条件をTabl e.3に示す.
Tab弓e.5汚染液 レ,メタレが起きないこと,塗り重ねができてメンテナ
ンスが簡単にできることなどが上げられている。調査し
た自然塗料の概要をTab;e,1に示す。
3ヒ 実験方法 3.1快諾ヰニ摘斗
北米輸入広葉樹のアルダー材(▲ち1nus r ubr a:寸法 15鋸1コ1(L)× 70nl m(隕7)× 10Hl m(H))を研磨紙(キ240)で素地調整
しものを試験片とした−
3.2 塗装処理
供試塗料は 内装用中家具製品を対象とした,透明性 上げ用の自然塗料(6種)を選定しら 比較打ための汎用塗 料としてNCラッカー塗料(1種),湿気硬化型ポリウレ タン樹脂塗料(摺り周:1竃鉦 アルキッドポリオ岬ル硬 化型ポリウレタン樹脂塗料(1穫)と油性塗料(チークオイ ルニ1種)を加え合計用種とした.供試塗料と塗装工程を
了ab≧e】名 所水試験の方法
棒針 汚染液名
汚染液の調整1博昭
4.4%水溶液
ト=アセトン アセトン溶液
3 アンモニア10%水溶手夜 … 4 クエン殴 Fl O%水溶液
… H 要
コーヒー40gを熱湯i Lに溶かした液
」⊥
ロラミンTの2・5抽溶液
を80±3℃温水中に川寺間浸せきした
後,60±3℃の恒温器中で2時間乾燥するエ擾 を2回繰り返し
,室温に達するまで放置す
る,
えた方法
耐水A試験の温水を鋸±3℃に
耐水B試験
j
i
耐水B試験の浸せき乾燥二ー二程が1匝1の方
耐水C試験
耐水C試験の温水を購二3℃二に摸えた方
耐水D試験
平成9年鷹 研究報告 大盤・県産業科学妓補センタ山 3.3 耐水試験
耐水試験は,J AS特殊合板の農林規格の耐水試験に準
じ,Tab巨e亡4に示す試験方法で行った,塗装面(表面)以外 の側面や裏面にシーリング剤(耐水耐熱)を塗布したもの を試験に供した,
3.4 耐湿熟試験
耐湿熱試験は,∴キS特殊合板の農林規格の耐湿熱試験
に準じ,沸騰水を入れる容器にはガラスビーカー(¢ヰ5nl m
X60mnl (H))を用い,アルミ箔でふたをして実験を行った。
3.5 汚染試験
汚染試験は,‖ S Ai 531(家具の常温液体に対する表面
抵抗試験)に準じて行った。使用した汚染液は,Tab≧e.5 に示す− 試験片に汚染液を接触させる試験時間は1時間, 6時間,24時間としたn
4.結果 4.1耐水試験
耐水試験の結果をTab∃e.6に示す.温水の温度が高くな ることと,浸せきと乾燥の繰り返し回数が増えることに 比例し,塗膜の劣化が進み艶びけ(光沢の低下)がおも
に認められたb 耐水Å試験の光沢変化(∠〔;%=(初期光 沢度一試験後の光沢度)/初期光沢度)は70∼25%に
なった。自然塗料の評価… ′ ま1∼4で試料により異なるが> HCラッか−や油性塗料と同等又はそれ以下で耐水性が 劣ることがわかった,
Tabl e。6 耐水試験の結果
た.自然塗料の評価は3∼4で試料により異なるが、ポ リウレタン樹脂塗料と同等の耐湿熱性があることがわ かった
† abj e.7耐湿熱誠駿の結果
J 曳cc 毒 3 ′ ′
円弓痕 艶びけ
巨 虹皿L岬 星些墜望 Bc 室 4 Cc 董 4 ロ Dc … 4 〃 Ec 萱 4 ロ ∃ Fc 芦 2 円弓′肘状の痕と艶びけ Gc 4 i 円弧状の痕 i 宣c 3 5円弧状の痕 …
注)評価方法(目視による判定:割れ ふくれメ はがれプ 変 色,艶変化)i .著しく変化あり 2.変化が容易に確認できる 3,わずかに変化あり 4,よく見ないとわからない程度の変化
5,変化なし
4.4 汚染試験
日常生活を想定し,試験時間を1時間(食事程度の経過
後).6時間(仕事又は他の活動時間経過後),2∠呈時間 (1巨∃後)と設定したが∴試験時間による汚染の進行は認 められるもののその影響は少なく、汚染の状態は類似し たので† 24時間の結果をTabi e.8に示す.
アンモニアでは9.亀c∼BcとEcが白色に,〔cとDcが黒色 に著しく変色し,炭酸ナトリュウムでも。Åc∼Bcが白色 に著しく変色し,これらのアルカリ性液には非常に弱い ことが認められた.インク(水性染料液)では,試験時間 の長さに比例し著しい染液の吸着が認められた.洗浄剤, 消毒剤では,試験時間の長さに比例しわずかな黄変が認 められた.酢酸,クエン牽などの酸ノ牲液とエタノール, 塩化ナトリュウム句 ミルクち コーヒー、紅茶などではよ く見ないとわからない程度の雛びけや変色が認められた. オリ鵬ブ滴き パラフィン油などの油脂では,全く汚染が
認められなかった。
汎堅塗料と同様に,アセトン,酢取エチル¶ プチルや
ベンゼンなどの有機溶剤では,全ての試料において塗紋 の溶解や変色などの著し訂汚洗が蘭められた.ヨウ素で も− 全ての試料において著しい染液の吸着が認めちれたさ
5. まとめ
自然塗料の塗綬の耐久性(耐水性,耐漫熱性、耐汚染 性=こついて試験を実施し、以Fの結果が得られた. り耐水性については」ⅠヾCラッカーーや油性塗料と同等ま
たはそれ以下であることがわかった. 注〉 評価方法(冒視による判定:割れ ふくれ,ほがれ,変
色} 艶変化= 著しく変化あり 2.変化が容易に確認できる
3,わずかに変化あり1i .よく見ないとわからない程度の変化
鼠変化なし
軋3 而犠撥蘭凝
耐湿熱試験の結果をTab巨e7に示す\A両○ はNCラッ
カーやポリウレタン樹脂塗料と似たピーーか一による円弧 犠の痛が認めちれ 他の自然塗料には艶ひけが認められ
平成9年度 研究韓告 大分県産業組学桟蘭センタ仙 Tab壷e.8 汚染試験の結果(24時間)
試験液 試 料 簡
\0. Ac ト如 卜
軸 Bc Cc Fc Gc Hc 薯㌧… 三㌧ 」
ふ
4
室
4室2≡2巨1
23 1 1 i
毒1
り妻。… 1
〇
4 4 4
4妻{ 4要4墓4 〇
〇 b十 \
j 茎 3
4 妻i ≡ 4 毒 4
∈ 卜界面活性剤4 … 4i
6 4
4 … 〇 萱 4 弓 ∈
5ま
4+喜 4 … i ト丈
H q
∵ Fアルコール水溶液 … 」 有機溶剤(エステル系)∈
12 竜 4 i … 5
こ4 毒 4こ4 上土」」」
十1∵★↓
」
」 アルカリ性液
4
17 ≡ 「丁†
1
n18 ∈ 4 巨 5
5 喜+5 巨5 萱 ∃
!5
q
注)評価方法(目視による判定)1.著しく汚染されている 2.汚染されているのが容易に確認できる 3。わすかに汚染されて いる 4.よく見ないとわからない程度の汚染状態 5。汚染なし
2)耐湿熱性について且 ポリウレタン樹脂塗料と同等で あることがわかった.
3)耐汚染性については,アルカリ性液やインク(水性染料 液)に汚染されるとともに。汎用塗料と同様に有機溶剤や
ヨウ素にも汚染されることがわかったヴ